祇王のCD

今、ホスピスにいます。

入院したのは、3月10日です。

ほぼひと月経ちました。

居心地はいいです。

10年位前に、病院の方に、父が入院した時、様子を見てまして、私も、病気になったら、将来はここにお世話になりたいものだと思ってました。

ここ、近隣で、とても評判がいいんです。

ホスピスは、ずっと昔、ある大人気作家だった方が入院されて以来、自分も、どうだろうかと考えてました。

昨年、末期の病気と分かり、ホスピスへの入院を勧められた時、やはり、ここがいいなと思いました。

考えてた通り、居心地がいいです。

ナースさんはじめ、スタッフの方も、いい方ばかりです。

主治医の先生も、お料理が好きな素敵な女性。

こじんまりとした建物で、ちょっと古びてるのも、親しみやすいです。

痛みは、お薬で抑えてくださいますし、ずっと点滴だけだったのが、入院してからは、流動食も、おもゆと、具なしのスープ、味噌汁のみ、それも朝晩2回とはいえ、口から入れられるようになって、家にいた時に比べ、体力・気力が付いてきました。

このままの状態が、いつまで続くのか分かりませんが、できることをしておかなければ、と思います。

カトリックの学校を出てますので、カトリックのことは、なにもわからないとはいえ、親しめる雰囲気だといえるかもしれません。

また、若いナースさんたちと、結構合うんです。

今まで、若い方たちと合うとは思いませんでした。

昨年出版した本に、この病院のことも書きましたので、先生やナースさんたちに、少し進呈しましたが、読んでくださった方たちが、感想を述べに来てくださいます。

泣きました、とか、お優しいとか、心に灯がともるようだ、とか、身に余るお言葉が多いです。

私の家族は、これまで、私の文章も、朗読も、ほとんど理解してくれなかったのに、まず、出版社に勤める甥の奥さんが、本を読んで絶賛してくれました。

家族も、少しずつ理解し始めてくれたみたいで、入院してから、私は幸せになりました。

このような健康状態になって、終の棲家に来て、幸せになるとは思いませんでした。

ただ、最大の誤算は・・・

物が食べられなくなったことです。

おもゆと中身なしのスープ、味噌汁以外は口に入れられません。

それも、お昼抜きで、一日二回だけです。

口でものを噛めない、飲み込めないというのは辛いものです。

とくに私は、食いしん坊ですので。

だいぶ慣れてきた今でも、好きなパスタをこしらえて食べる夢を、よく見ます。

高級なお寿司を食べておきたかったなあ、峠の茶店のうどんを食べたかったなあ、と後悔することばかりです。

SNSの仲間の方たちは、よく好きな食べ物の写真を、載せられますが、辛いです、無視します。

お料理自慢の方には、いいかげんにしてよ、といいたくなります(ごめんなさい!)

口ざみしさは、嗜好品でごまかしますが、なかなかごまかしきれませんね。

今も、パソコンの横に、梅こんぶ茶のお湯のみと、小さなチョコふたかけを置いてます。

チョコは大丈夫なんです。

そうそう、嗜好品といえば、ワインはOKなんです。

午後、お部屋で、父が置いていった江戸切子の小さなお盃に、ちょっと注いで、陶然としたりします。

おつまみには、チョコがあうのを発見しました。

また、ここは、カトリックの病院ですので、こじんまりとしたチャペル(お御堂)があります。

コロナのため、その部屋は使われていません。

音響が大変いいのに気づき、朗読の録音に使わせてもらってます。

自作の短い物語(平家物語の「祇王」の再話です)を、自分で朗読して、小さなCDにしたいのです。親しい人たちにだけ、形見として配りたいと思います。

お話は、再話とはいえ、評判がいいです。

ホスピスからは、外出ができませんし、技術者の方に来ていただくこともできませんので、音の響きのいいお御堂に目をつけました。

ただ、この部屋は、防音ではありませんので、どうしても、外の物音が入ってきます。

私の口がまわらないこともありますが、修正はできませんン。

仕方ありません、ホスピスのお御堂での録音だというのを、売り物(?)に」するか?と開き直りました。

人間、開き直ると強いです。

昨年、本を出版した出版社が小冊子付で、CDも出版しているとのことで、訊き合わせてみようかと思います。

「地上より永遠に(ここよりとわに)」じゃありませんが、余命というのは、お医者様にも、なかなか分からないそうです。

いつまで、ここにいられるか分かりませんが、ここを離れるまでは、仲良くしてくださいね。

 

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