料理人季蔵捕物控シリーズとロンドン謎解き結婚相談所
昨年秋、入院してから、自宅療養中、そして、ここへ移って来てから、ずっと読み続けているミステリ・シリーズ。
和田はつ子さんの料理人季蔵(としぞう)捕物控シリーズです。
もう何十冊出てるでしょうか?
欠本以外は全部読み終わり、6月に出る最新刊を待っているところです。
季蔵(としぞう)は、江戸時代の日本橋木原店(だな)の一膳飯屋「塩梅屋(あんばいや)」の主です。
一膳飯屋離れした素晴らしい腕の料理人の上、庶民の懐が痛まない美味しい料理を考え出し、作り方まで書いて配るので、大評判の店です。
実は、その上、訳アリの元武士で、江戸北町奉行の懐刀でもあります。
家族から切り離され、元許嫁は、心を病み、悲惨な境遇から、一膳飯屋の先代に救われたのです。
それから、料理人としての腕を磨き、温かい情と名推理、それに刀の腕で、悪をやっつけます。
というぐあいには、うまくいかないのですが。
現実には、政の世界には、いろいろありまして・・・
悔し涙を飲むことも多いんです。
とても面白い本なのですが、なにしろ、美味しいお料理が次から次に出てきますので、
私のようななにも口にできない身の上では、目の毒です。
一時は、欲求不満の塊になって、読むのを中断しました。
でも、食べられない、という腹がだいぶくくられてきたこの頃では、食べられない美味しいものを読む、というのも、意外にいいかもしれないと思えてきました。
なにしろ、一時は、一膳飯屋の昼餉(ランチ)、卵かけ飯や、雑炊、お粥、お茶づけにいたるまで、出てくるたびに、生唾を飲み込まなければいけなかったので・・・
お話の舞台は、江戸前の美味しい魚や貝、その他の食材、ももんじ(獣肉)や鯨肉まで、青物、穀類その他が豊富な、まだいい時代だったのですね。
南蛮のお菓子まで出てきます。
上記は、角川時代小説文庫で手に入ります。
それから、この点も肝心です。
登場人物たちが、読者と、すっかり顔なじみになっちゃう点です。
「塩梅屋」先代の娘のおき玖や、やがてその連れ合いになる同心、それに下働きの三吉少年(かわいい!)季蔵の弟分の豪助夫婦、グルメの岡っ引きの松次、超グルメの北町奉行、烏谷椋十郎(からすや りょうじゅうろう)(実は季蔵の上司)などなど
顔ぶれの懐かしさでも、読み進められます。
その点、先輩の「御宿かわせみ」なども同じですね。
我々日本人は、ホームドラマに弱いです。
さて、ちょっと気分を変えようかと思って、翻訳ミステリを手に取りました。
創元推理文庫の「ロンドン謎解き結婚相談所」です。
アリスン・モントクレア作 山田久美子訳 (山田久美子さんて、ローリー・キングの「シャーロック・ホームズの愛弟子」シリーズを訳した方では?)
今年の2月に出た新刊です。
舞台は、第二次大戦直後のロンドン。
二人の若い女性が、偶然知り合い、共同出資で、結婚相談所を始めます。
ところが、いい結婚相手が見つかりそうだと思った若い女性が何者かに殺されてしまい、こともあろうに、相談所で知り合った交際相手が、有力容疑者として逮捕されてしまいます。
こうして、端緒についたばかりの共同事業の危機に、二人の女性は結束して、調査、犯人探しに乗り出しました。
上流階級出身の子持ちの若い戦争未亡人と、どうやら元スパイらしい若い女性の二人です。
教養も育ちも違う二人が協力し合ううちに、いいムードになっていくとはいうものの・・・
問題は山積みです。
この本に関しては、救われました。
美味しいものが、ほとんど出てこないんです。
大体、舞台が戦争直後のロンドンで、駘蕩たる江戸じゃありません。
食材なんか、あるはずが・・・
帰りがおそくなった翌朝なんか、さしものレディーも「朝食はなにになさいますか?」という召使の問いに「今朝はトーストと紅茶でいいわ」ですから。
慢性欠食児童の私は、ほっとしました。
このお話も、また面白いです。
続編が出るようですし、翻訳ミステリとは、しばらく遠ざかっていましたので、読んでみようと思っています。