イギリスの本 断片的思い出

 

庭には雨風が吹き荒れています。

ナースさんたちスタッフの通勤は大変でしょう。

でも、私たち患者は、コンクリートの建物の中で風雨から守られています。

まるで、お城の中みたい・・・

 

昔、読んだスコットの「アイバンホー」を、思い出しました。

タピスリー(つづれ織り)って、よく昔の西洋の本に出てくる織物がありますが、あれは、昔の石造りのお城には、隙間風が多かったので、風よけも兼ねて吊り下げられたとか・・・

はじめて知った時は、ちょっと驚きました。

厚地でどっしりとした、贅沢なあの織物は、寒さ除けでもあったのか。

西洋っていっても、昔は質素だったんだなあ・・・

イギリスの古典童話「つづれ織りの部屋」にも出てきます。

 

はじめて、本物の西洋のタピスリーを、現地で観たのは、フランスのフォンテンブローの宮殿でした。

生まれて初めての海外旅行での、オプショナルツアーです。

これが、タピスリーか、古くなってるけど、贅沢なものだな・・・と思いました。

ほかの国からの人も一緒で、ゴタゴタしてましたけれど、若かったから平気でした。

宮殿の部屋や廊下に、たくさんかかってました。

フォンテンブローの場合は、もう寒さ除けの時代ではなかったのでは?と思いました。

贅沢な宮殿でした。

 

イギリスの本で、子供のころ初めに読んだのは、バーネットの「小公子」、「小公女」などです。

「小公子」の主人公セドリックのおじいさま、ドリンコート伯爵の、広壮なお屋敷には驚きました。

後年、イギリスを何度か訪れましたが、あれほど広くて立派なお屋敷には、なかなか出逢えませんでした。

「小公女」の方は、ヒロイン、セーラの苦労が身に沁みました。

自分も、ひもじくてたまらないのに、甘パンを、もっと貧しい子に譲るシーンなど、つよく記憶に残っています。

貴族も、インド帰りの実業家も、一歩間違えれば陥る貧困も、イギリスの現実だったのでしょう。

 

私にとっての、バーネットの三作目「秘密の花園」も、とても面白かったです。

インドの疫病、気候や、風土によるイギリス国内での、女の人や子供の病気、それも、現実だったビクトリア時代。

 

ホームズに初めて出逢ったのも、子供の頃です。

お誕生日に、なんでも好きな本を、一冊買っていいよ、といわれて、街で一番大きい(?)本屋さんに連れていかれて、あれこれ見て、やっと買ったのが、

講談社(?)の本「バスカビルの魔犬」です。

あ〜怖かった!

魔犬の伝説はもちろん、ダートムアの荒れ地も、グリンペンの底なし沼も、登場人物の名前まで(バリモア夫妻)・・・

のちに中学生になって、大人向きのホームズを読んで、夢中になるきっかけとなりました。

 

このほかにも、子供時代にとってもらっていた雑誌の付録などで、ディクスン・カーともおなじみになりました。

中学に入ってからは、文庫本で、クリスティーやブラウン神父などを次々に読み、ミステリが好きになりました。

フランスのミステリ、ルパンものや「オペラ座の怪人」の原作者ガストン・ルルーなども読みました。

翻訳の児童文学も、本をたくさん持っている友人の本を借りたりして、読み続けていました。

こうして、イギリスの児童文学や、ミステリは、中断していた時期もありましたが、子供時代以降、読み続けることとなりました。

また、ある時期からは、おどろおどろしい作品にも魅かれるようになりました。

狭く、うす暗い学校図書館の隅で見つけた世界ロマン文庫の「月長石」、イギリスのウィルキー・コリンズ作で、ミステリの古典です。

後に、この方の「白衣の女(びゃくいのおんな)」にも魅かれるようになりました。

「白衣の女」や「ブラウン神父」ものに出てくるハムステッド・ヒースなど、イギリスの地に行きたいところもできました。

 

また、学生時代、神田の青空古本市で、イギリスの原作らしい「有罪無罪」という黒岩涙香の翻案ミステリを見つけ、しばらく翻案物を読んだこともありました。

涙香は、「レ・ミゼラブル」(「嗚呼無情」)や「モンテクリスト伯」(「巌窟王」)などを、おそらく日本ではじめて訳した方です。

翻訳というよりは、自在な翻案だったようです。

 

そのあとは、しばらくミステリから離れ、イギリスの児童文学、フィリパ・ピアスやエリナー・ファージョン、アリソン・アトリーなどを読みました。

「トムは真夜中の庭で」、「りんご畑のマーティン・ピピン」、「時の旅人」など、みんないいです。

このほかにも、いろいろ読みました。

肝心の学校の勉強では、なにを読んだのかな?と、お叱りを受けそうな、ていたらくかもしれません。

でも、そういった読書が、もしかしたら、(少しは)私の人生後半で、役に立ったかもしれないと思います。

 

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