トイレの花子さん ある短大の思い出

 

都市伝説って、「口裂け女」とか、いろいろあるようですが、これは、学校伝説とでもいうのでしょうか?

「トイレの花子さん」というのも話題になったことがありましたね。

朗読講師の仕事を初めて10何年目かに、都心のある短大から、仕事の依頼が来ました。

夜の公開講座での朗読教室です。

対象は、社会人や家庭人など、学生中心ではありません。

私の家からは、なにしろ遠いし、夜だし、躊躇もしましたが、無名の講師に、こんないい仕事の依頼は、もう来ないだろうと思い、お引き受けしました。

週一回、晩秋の2か月、せっせと通いました。

担当の方はいい方で、生徒さんの中には、講師の私を、とても気に入ってくださる方もありました。

3年目は、しとしとと雨の降り続く秋でした。

毎週、授業の日は、いつも雨・・・

校舎は、鉄筋なので、中へ入ってしまえば、軍艦の中にいるみたいで、平気なのですが、電車通勤とはいえ、長時間なので、憂鬱でした。

ある日、講師の私が、授業の最後まで残ってしまい、これから教室を出て帰る、という時、寒いし、帰りは長い時間電車に乗りますので、トイレに寄っておこうと思いました。

ほかの教室は、すべて終わり、廊下は、もう薄暗くなってます。

人の姿はありません。

トイレに入ろうとすると、ザっと、水の流れる音がしました。

誰もいないはずなのに・・・

私は、ぞっとして、トイレに入らず、走るようにして、1階の出口まで直行しました。

トイレは、駅で行きました。

中年になってから、講師の仕事を始めた私は、夜の学校なんて久しぶり、気味が悪かったんです。

そこの仕事は、数年間続けましたが、なにしろ遠いので、年のせいもあり、夜の長距離通勤には、疲れ果て、数年でやめました。

思えば、朗読講師の仕事を始めてから十数年経っていて、その頃が、一番、仕事が多かったのですが、肉体は、もう、ちょっとくたびれはじめて来てたんですね。

ビル街の校舎で、校庭のない、いかにも都会の学校でした。

そのあたりの学校は、みんなそうだったんでしょう。

学生の方たちとお話しすることがなく、寂しかったです。

 

 

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