碧い眼の朗読ファン

 私は、日本語で朗読しますので、日本語の分からない方には、理解していただけません。
いろいろな場所で朗読しますから、聞き手の中に外国の方がいらっしゃる場合もあり、その点、残念に思っていました。

以前、尺八演奏家の方から依頼されて、ナレーションを勤めたことがあります。
そのご縁で、尺八を愛好する方たちの集まりに、時々、顔を出すようになり、いろいろな方と知り合いになりました。
ここでは、皆様が尺八を演奏なさる合間に、朗読を聴いていただくことがあります。

尺八は、今や、国際的です。
このグループのメンバーにも、外国籍の尺八愛好家がいらっしゃいますし、中に、日本語ができる方も、あります。

例えば、フランスの会社の社員で、日本に、数年間滞在しているという方は、フランスで日本の武術と出会い、日本に来られてから、尺八と出会ったそうですが、かなり、日本語がお出来になります。
また、礼儀正しくて、なかなかの紳士です。

ある日、私は、「ベタの足あと」というお話を、皆様の前で読みました。
これは、ある方が、少年時代に飼っていた愛犬の思い出を書かれた文章です。

朗読が終ったあと、そのフランスの方は、私のそばへ来られて、「とても、いいお話ですね、その本を買って読みたいと思います。」とおっしゃいました。
感激しました。

この方は、日本で、いろいろなものを手に入れられたそうですが、一番の収穫は、チャーミングな、可愛い、日本人の奥様だと思います。

もう一人、こちらは、イギリスの青年です。
尺八を学ぶために来日され、働きながら、勉強なさっています。
演奏している時のお顔が、ちょっと、ジョン・レノンに似ている、優しい方です。
サリー州のご出身だそうで、初対面の時、サリーに行ったことのある私と、話がはずみました。

日本にいらして、もう数年になるのに、日本語を勉強しようとしない、と、皆様から責められていましたが、最近、やっと本気で、勉強を始められたようです。

先日、この集まりで、私が、イギリスの童話の一節を、読みましたところ、終ったあとで、その方が「面白かったです。全部はわからなかったけれど」と言ってくださったので、とても、うれしく思いました。

地球は、狭くなりました。
これから、日本語の朗読を理解してくださる外国の方が、どんどん増えてくるのではないかと期待しております。

(注)外国の方、といっても、碧い眼の方ばかりではなく、いろいろな眼の色の方がいらっしゃると思いますが、ここでは、昔から、日本で、外国の方を表現する際に使われている、“碧い眼”という言葉を使わせていただきました。

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