春めいて来たとは言うものの、まだ、寒さの残る、3月のある曇り空の日曜日。
私は、薄日の射し込む二階の小さな部屋の窓辺で本を読みました。

「ダフニスとクロエー」、大昔のギリシアを舞台にした、
牧人の少年と少女の恋の物語です。
何度かの試練を経たのち、主人公のダフニスとクロエーは、結ばれ、
めでたし、めでたしとなります。

終わり方も良いのですが、前半、二人が恋に目覚めるまでと、
ぎこちなく愛し合う様子が、とても、心地良いのです。
春から夏へかけてのギリシアの野を吹く風が頬に感じられるかのようでした。

けれど、食いしん坊の私は、お昼時が近づいてくると、彼らの、飲んだり、
食べたりするシーンを読んでいて、気になって仕方がありません。

羊と山羊を飼っている二人なので、野原で山羊の乳を搾り、
山羊のチーズを荷物から取り出して、食べます。
ぶどう酒を乳に混ぜて飲むということもしているようです。

私は、台所へ降りました。牛乳をマグカップにたっぷり注ぎ、
チーズを大きく一切れ切って、パンと一緒に持って上がります。
前日買った、ワインも持って上がりました。

読書を中断して、昼食です。窓を開けて、外の風を入れながら、食べました。

泡立つ、搾りたての、山羊の乳ではなく、昨日、コンビニで買った、紙パックの牛乳です。
チーズも、国産のプロセスですし、ワインも国産で、ジュースのように甘いものです。
窓からの風も、ギリシアの風というわけにはいきません。

けれど、私は、この食事に満足しました。

チーズと牛乳は、とても良く合うし、ワインを飲んで、ちょっぴり、体も温まりました。
それに、古代ギリシアの物語を読みながら、主人公達と同じ(?)食べ物をたべるなんて、
最高に贅沢なことのように思えます。日曜日の昼食は、羊飼いのメニュー。
あなたも、試してご覧になったら、いかがでしょう。

第3回 日曜日のグルメ
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