自由学園明日館での結婚式

 3月2日、甥が結婚しました。ひどくお天気が悪くなるとの予報で、心配したのですが、それほどのこともなく、ほっとしました。

 ふたりは職場で知り合ったそうです。喜びを隠せず、口元がついほころんでしまう甥。しっかりと大事なパートナーによりそう花嫁さん。これから一緒に過ごせるのを心から喜んでいることが伝わってきます。恋愛結婚とはよいものだな、と思いました。つらいことの多い世の中で、こういう幸せそうなカップルを見ることもあるのですね。雨風に痛めつけられることなく育った若木たちがともに、折れることなく伸びて行ってほしいと思います。

 ふたりが式を挙げたのは、池袋の自由学園明日館(みょうにちかん)です。自由学園とは、1921年(大正10年)に羽仁もと子さん・吉一さんご夫妻が創設された女学校で、校舎の明日館は、帝国ホテル旧館を設計したフランク・ロイド・ライトの設計による建物です。学校法人自由学園自体は、都心を離れて、今も続いているそうですが、老朽化した明日館の建物は、重要文化財となり、修復されて、カルチャースクールや結婚式場として使われながら、保存、修理が進められています。

 羽仁さんご夫妻は「婦人の友」という雑誌も創刊されました。これは長命な雑誌で、今も続いています。明日館の隣の建物が“婦人の友社”のビルです。

 母は、この雑誌を若い時からずっと購読していました。亡くなる数年前からは、同じ会社の、老人向けの「明日の友」に切り替えましたが。この雑誌には、いろいろなことを教えられたそうです。母によりますと、あの「風と共に去りぬ」は、「婦人の友」誌上で、初めて日本に紹介されたとのことです。

 私も、子供のころから、この雑誌を読み始め、いろいろなことを知りました。70才を過ぎてから画家として活躍し、101才で亡くなるまで、アメリカの国民的な画家だった“グランマ・モーゼス(モーゼスおばあさん)”を知ったのも、「婦人の友」誌上ででした。“モーゼスおばあさん”は熟年の星です。齢をとってからも、人間には、いろいろな可能性があることを教えてくれました。甥たちは、「婦人の友」と母の関係など知らずに会場を決めたのでしょうが、期せずしてあの世の“おばあちゃん”を喜ばせることになったわけです。

 

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