大阪・京都かけある記

「煙が目にしみる」

 

 9月4日(金)5日(土)と2日間で、大阪・京都に行ってきました。

 10月18日(日)に、東京、国立で朗読とジャズのジョイント・コンサートを行うことになりまして、その関係で、大阪に用事ができたのです。

 コンサートは題して「煙が目にしみる」

 ザ・プラターズの名曲のタイトルですが、大阪にお住いの久保田照子さんという91才の女性が、10年前に書かれたエッセイの題でもあります。

 産経新聞関西版 読者投稿欄 「夕焼けエッセー」の 常連投稿者でいらっしゃる久保田さんが、2005年、終戦60年の節目の年に投稿されて、大賞を受賞された作品です。

 「夕焼けエッセー」は、ほとんどの投稿者が、文章に関しては、アマチュアだと思います。でも、素敵な文章ばかりです。

 制限字数600字のエッセーには、さまざまな人生が詰まっています。

 5年分の投稿作品を集めた「夕焼けエッセー まとめて5年分」という本が2009年に産経新聞出版から刊行されています。

 関西でしか読むことの出来ないこの投稿欄ですが、私は、よく朗読しに行く、中野のお馴染みの店で、やはり、このお店の常連である、八丈島出身の「本のプレゼントおじさん」から、この本を贈られて読みました。

 終戦直後の大阪の闇市で、上品で優しそうなおじいさんが、蓄音機を売っています。

 若い娘だった久保田さんは、ほしくてたまらなくなり、おじいさんに声をかけます。

 おじいさんは、ほほ笑みながら、久保田さんのわずかな所持金で、蓄音機を売ってくれました。

 そして、焼け出されたので、レコードは1枚もないという久保田さんに、1枚のレコードまでつけてくれました。

 それが、ザ・プラターズの「スモーク・ゲッツ・イン・ユア・アイズ」でした。

 久保田さんは、4畳半のアパートの一室で、その曲を聴いて、言葉の意味は分からなかったのですが、泪がこぼれたそうです。

 このエッセーを読んだ時、暗い闇市の一角に、ぽっと灯りがともるように思いました。

 この作品や、「夕焼けエッセー」の数々の文章を読み、すっかり気に入った私は、朗読教室のテキストとして使い始めました。

 そして、2011年に地元小金井で、朗読会を開く際、生徒さんたちとご一緒に、この本からたくさんの作品を読みました。好評でした。

 そのあと、私のHPで、朗読会のことを知ったという大阪の橋本典子さんという方からメールが来ました。その方は「煙が目にしみる」の作者、久保田照子さんのご友人だとのことです。橋本さんを通じて、久保田さんとの交流が始まりました。そして、2012年には、大阪まで行って、久保田さんたちとお会いし、朗読を聴いていただくことが出来ました。私は、久保田さんの作品を、いつか「煙が目にしみる」の歌と一緒に、多くの方たちに聴いていただけないものかと考えました。

 そして、友人の歌手、みうらまちこさんに話を持ちかけました。

 彼女は、私の朗読を聴いて、涙を流しました。

 二人は、協力して、いいコンサートにしようと話し合いました。

 そして、終戦70年目の今年、12月8日の開戦記念日の直前にコンサートを予定していたのですが、会場の都合で、急遽、10月18日に行うことになりました。

 まちこさんは、作者の久保田さんにお逢いして話を聴きたい、それに、この企画を、産経新聞社さんに話してみようといいます。

 橋本典子さんに連絡して、お二人に9月4日にお会いすることになりました。

 また、久保田さんたちとの会見のあと、産経新聞大阪本社にうかがって、文化部長さんと、「夕焼けエッセー」担当の記者さんとお話しすることになりました。

 それに大阪公演のことも考えて、会見のあと、心当たりの会場を、見に行くことにもなりました。

 早朝に東京を発って、一日に三件の用事をこなすハード・スケジュールとなりましたが、二人とも、ふうふういいながらも、なんとか1日の予定をこなし、寝につくことが出来ました。

 翌日は、宿泊先の京都で、まちこさんの知り合いの着物デザイナーの方とお会いして、お昼にお蕎麦をいただきながら、しばらくお話しました。

 この時、念願のにしん蕎麦を食べることができました。

 そのあと、京都高島屋で、まちこさんが大好きなアーティストの方の展覧会を観た後、私は帰京し、まちこさんは、故郷の大分に向かいました。

 あ〜忙しかった!

 でも、収穫の多い旅でした。

 大阪公演は、12月13日に決まりました。

 久保田照子さん、橋本典子さん、ありがとうございました。

 再会できてうれしかったです。

 産経新聞大阪本社の編集局文化部部長、藤浦淳さん、「夕焼けエッセー」ご担当の記者、

 尾垣未久さん、それに写真報道局の柿平博文さん、大変お世話になりました。どのような記事を書いてくださるのか、楽しみです。

 

 

 back

home