六郎 ポプリ 武蔵野 ニューヨーク

 1月1日発売の4作目のCDです。

「六郎」 小林恭二 作 「本朝聊斎志異(ほんちょうりょうさいしい)」より 集英社 2004年 発行

 数年前に高齢で亡くなった父は、「啓子の朗読は、よくわからない」といっていました。もっともだと思います。父が聴いたことのある朗読といえば、徳川夢声の「宮本武蔵」だけだったそうですから(父はそれを、子供時代に、リアルタイムで、ラジオで聴いていたとのことなので、驚きますが)。

 でも、父は、この「六郎」だけは気に入っていたのではないか、と思います。最晩年に、外出ができなくなってから、私が朗読して、テープに吹き込んでおいた「六郎」を、何度も何度も、繰り返し、聴いていたようです。

 このお話は、江戸時代の利根の川べりでの物語ですが、父は川べりで育ったようです。それに、全編に漂う静かな時の流れは、老いてゆく父にとって、好ましいものだったのではないでしょうか?私も、このお話がとても好きです。六郎のような友達がいたら、どんなに幸せだろうかと思います。

 

「思い出の中の男の子」 「そっちへ行くと・・・」 「優しい公園」 「少年の日に別れを告げて」

「私の部屋のポプリ」シリーズ より 熊井明子 作 河出書房新社

 日本でのポプリの人気に火をつけた、エッセイストの熊井明子さん。熊井さんのエッセイ集「私の部屋のポプリ」は、人気があり、続編、続々編と、引き続き書かれました。復刻版も出るほど愛され、ロングセラーとなっています。私も、長年の愛読者です。熊井さんのエッセイには、啓発されてきました。朗読をするようになってから、いろいろなところで読んできましたが、その名エッセイを、朗読してCDに収められる日が来るとは思いませんでした。熊井さんは、そのほかにも、多くの本を書かれています。また、猫を愛する方でもあります。今、書いていらっしゃるのは、猫に関する本だそうです。

 

「武蔵野」 国木田独歩 作   武蔵野市民版 「武蔵野」より

 日本人の多くが知っていると思われる名随筆です。明治三十四年に出版されました。今、私の住んでいる小金井も、この随筆に出てきます。その「武蔵野」の最初の方を、お聴きいただきましょう。

 

「刑事の誘惑」 「見知らぬ夫」 「トイレ友達」

「ニューヨークの魔法のことば」 より 岡田光世 作 文春文庫 2010年発行

 ニューヨークで長年暮らすライター・エッセイストの岡田光世さん。岡田さんは、私たちに語りかけます。「心の底に寂しさを抱えて生きている(ニューヨークの)人々。でも、耳を澄ましてごらん、ほら、暖かい会話が聞こえてくるでしょう。ちょっと足を止めて、魔法のことばに耳を傾けてみませんか」と。

 岡田さんが、実際に経験されたことを書かれていますが、楽しく、暖かく、そして粋なお話ばかりです。最初に本を出す際、相手を幸せにする粋な英語表現と、それにまつわるエピソードを紹介してほしい、と編集の方に頼まれたとのことで、時々、英語が飛び出してきます。文春文庫の「ニューヨークの魔法」シリーズは好評です。版を重ねています。

 

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