『英国風の殺人』

 

英国のミステリが、若いころから好きでした。

ただ、先入観が強いというか、食わず嫌いのところがありまして、シリル・ヘアーという作家の名前を初めて聴いた時、てっきり、怖いミステリーを書く人だろうと思い込んでしまいました。

怖い話は、大嫌いなので、それ以来ずっと読まないまま来ました。

昨日と今日、読んでみて、長い間、勘違いをしていたことが分かりました。

英国の昔のミステリが好きな人なら、喜んでしまう設定です。(1951年刊)

田舎の、貴族の広大な屋敷で、クリスマス・イブに殺人が起こります。

しかも、雪のため、交通が途絶して、関係者は、全員、閉じ込められてしまいました。

居合わせた人たちは、英国貴族、ヨーロッパの学者、レディの称号を持つ若き美女、現役の大蔵大臣、その護衛としてついている警部、館の執事とその娘など、さまざまです。

ミステリなので、人殺しが出てくるのは当然ですが、現代のミステリに多い、残酷な描写は出てきません。

英国の古典ミステリが好きな私は、読んでいてほっとしました。

故郷に帰ったような安心感といいますか・・・

解説を書いていらっしゃる小林普さんは、この作家に惚れこんでいます。

ヘアーのほかの作品も読んでみたくなりました。

この訳書が出された当時(1999年)、訳されているのは、この作品を含めて4冊のみとのことですが、調べて、できる限り読んでみたいと思います。

小林さんによると、

登場人物が、英国紳士から庶民にいたるまで、いかにもイギリス人らしいゆとりを持っており、作品に、独特のユーモアが漂っていて、全体としての格調の高さと相まって、なんとも形容しがたい魅力を醸し出している。

そうです。

まだまだ称賛の言葉は続きます。

1999年当時、翻訳で読める本は

「法の悲劇」 「ただひと突きの・・・」 「風が吹く時」 「英国風の殺人」

となっています。

 

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