チャリングクロス街84番地

今日、地元の図書館で行われた読書会に参加しました。

テーマは「手紙」ということですので、選んだ本は、へレーン・ハンフ 作

江藤淳 訳 「チャリングクロス街84番地」です。

私が持っているのは、1980年に講談社から発行された単行本です。

本を愛する人のための本、という副題がついています。

 

ニューヨークに住む売れない作家で、古典が好きなへレーン・ハンフさんが、ニューヨークでは手に入らない、綺麗で比較的安価な古書を求めて、ロンドン、チャリングクロス街84番地のマークス古書店に手紙を出します。

希望する古典がないか、いくつかの本の題名などを書いた手紙です。

これに対して、マークス古書店の支配人、フランク・ドエルさんが、返事を書きます。

こうして、約20年にわたることになる、文通が始まりました。

 

へレーンさんは、機知に富んだ面白い手紙を書きます。

フランクさんは、英国の執事風とでもいいますか、キチンとした、崩れない態度で応対します。

いつか、フランクさんは、へレーンさんの手紙を待ちわびるようになりました。

 

この文通は、マークス古書店のスタッフやその家族、へレーンさんの友人、知人などを巻き込んで、温かい交流が、長く続くことになりました。

 

なぜ、そのようなことになったか、といいますと・・・

文通が始まったのは、1949年、第二次大戦が終わったばかりです。

イギリスは、大戦中、何度も空襲を経験しましたし、戦中、戦後は、物資不足で、辛い思いをしたようです。

 

このことを知ったへレーンさんは、アメリカでは、比較的安く手に入る肉や卵などの食料品、また生活必需品のストッキングなどを、マークス古書店に送り始めました。

 

へレーンさんは、けして裕福ではなく、筆一本で稼いで生活しています。

 

そのへレーンさんが、身を削るようにして稼いだお金の一部で、このようなことをしてくれるのを知って、マークス古書店のスタッフや、その家族は、へレーンさんに好意を持たざるを得ませんでした。

へレーンさんは、一生懸命にお金を貯めて、憧れのロンドンに行きたいと思っています。

マークス古書店のスタッフたちも、その時には、宿を提供したり、温かく迎えるつもりで、へレーンさんを励まします。

けれども、やっとお金が貯まると、アパートの建て替えで、引っ越さなければならなくなったり、高額の歯の治療をしなければならなくなったり・・・

そして、20年目に、フランクさんが急病で亡くなり、この文通は終わりました。

へレーンさんは、フランクさんの遺族の了解を得た上で、この往復書簡集を出版します。

すると、本は、たちまち、ベストセラーになりました。

 

こうして、へレーンさんは、念願のイギリスを訪ね、まだ見ぬ、なつかしい人々と会って、交流することができました。

 

* チャリングクロス街は、日本でいうと、神田の神保町のような古書店街です。

昔は、古書店が、ずらっと並んでいたようですが、今は、古書店の数は、減ってきているようです。

 

このお話は、お芝居や映画になったそうです。

映画は、日本では公開されなかったようですが、へレーンさんを、アン・バンクロフト、フランクさんを、アンソニー・パーキンスが演じたそうです。

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